乾癬を治す!薬の選び方と最新の対策とは!?

乾癬

 

はじめに

 

乾癬(かんせん)とは、身体のあちこちで皮膚が炎症を起こして赤くなったり、フケのように皮膚がポロポロとはがれ落ちたりする皮膚病です。

 

人にうつらない病気ですが、「かんせん」という響きが「感染(症)」を連想させたり、人目につきやすい部位に発症することも多いことから、様々な誤解を生みやすい疾患です。

 

日本では約10万人以上の患者がいると推定されていますが、人口の割合からみると0.1〜0.3%とそれほど多くないため、病名を知らない人も多いのではないでしょうか。

 

根本的な治療法も確立していないため、社会の理解がなかなか進まない病気の一つです。

 

 

乾癬って何?

 

皮膚が過剰に増殖することで引き起こされる皮膚疾患です。

 

その原因は未だにはっきり解明されていませんが、遺伝的素因や環境因子、そして免疫異常が影響しているといわれています。

 

幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症しますが、50〜60代での発症率が高く、男女比は2:1と男性の方がかかりやすくなっています。

 

主な症状は皮膚が炎症を起こしてしまう紅斑(こうはん)、皮膚が盛り上がってくる浸潤(しんじゅん)、肥厚(ひこう)などです。

 

また鱗屑(りんせつ)と呼ばれる銀白色のフケのようなものが付着したり、それがボロボロと落ちる落屑(らくせつ)と言われる症状もみられます。

 

落屑は何らかの原因で表皮が異常に増殖し、皮膚のターンオーバーの速度が通常の10倍ほど速くなるために起こる症状です。症状が進むと赤斑の数が増え、大きくなってきます。

 

かゆみには個人差があり、ほとんど感じない人もいれば、中には強い痒みを感じる人もいます。治りにくく、数年から数十年続くケースもあります。

 

 

乾癬が良く出る部位は?

 

症状は全身のどこにでも現れますが、頭部、髪の生え際、膝、肘、腰回りなど、摩擦が生じたり、擦れやすい部位に多くみられます。

 

爪に症状が出ることもあり、その場合は爪が変形して凸凹になったり、爪がボロボロになってしまい、切ることも難しくなったりします。爪乾癬などと呼ばれることもあります。

 

 

乾癬の種類は?

 

いくつか種類があります。最も多いのは「尋常性乾癬」で全体の90%を占めていおり、一般的にはこれを指します。

 

「関節症乾癬」とは関節痛を伴う症状です。悪化すると関節の変形が見られることがあります。

 

「膿疱性乾癬」は膿を伴う発疹で、重い全身症状を伴うため注意が必要です。

 

「滴状乾癬」とは風邪などが原因で発症することがあり、尋常性より若い人に多く見られる症状で、比較的治りが早く軽く済む傾向にあります。

 

 

乾癬の症状とは?

 

人によって症状や発症する場所が異なりますが、一般的に慢性の経過をたどり治りにくい疾患です。

 

典型的な症状としては皮膚に紅斑(赤い発疹)が現われ、さらにその上に銀白色のフケ状のものが付着し、ポロポロとはがれ落ちます。かゆみや痛みはさほど感じない場合もあれば、強いかゆみを伴う場合もあります。

 

紅斑は肘、膝、腰、頭、手のひらなどに出やすく、皮膚がこすれやすい場所や絶えず刺激を受けやすい場所によく見られます。

 

命にかかわる病気ではありませんが、早期治療がなかなか難しく長期化しやすいため、患者にかかるストレスは大変なものです。

 

QOL(生活の質)を下げる病気としても知られていますが、QOLの程度は発疹の重症度と必ずしも一致しないため、安易な判断は禁物です。

 

人から見て目立つ場所に発症した場合や、若い女性などは通常の社会生活が送れないほど精神的に追い詰められてしまうこともあります。

 

 

乾癬が悪化すると?

 

関節炎を伴う乾癬の場合、治療開始が遅れてしまうと関節へのダメージが進み、日常生活に支障をきたす可能性があります。

 

アキレス腱、足首の腫れ、顎の痛みなど、腱や靭帯が骨に付着する部分に炎症が見られます。

 

赤斑など皮膚症状が先に現れてから関節に症状が出てくる場合もありますが、その逆もあり、診断が難しいものの一つです。

 

症状が進行して、全身の皮膚の9割以上が赤くなった状態を「乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)」といいます。

 

この症状が長く続くと、リンパ節の腫れ、悪寒、発熱、脱水、むくみなどの全身症状を伴うことがあるため、注意が必要です。

 

また「膿疱性乾癬」といって、中に膿が溜まった発疹が全身に広がってしまうケースもあります。発熱や倦怠感などが見られ、心臓や循環器疾患、呼吸器疾患の引き金になることもあるため専門的な治療が必要となります。

 

特定疾患に指定されているため、手続きを行えば医療費の助成が受けられます。

 

 

乾癬の原因とは

 

原因は未だにはっきりとは解明されていませんが、これまでの研究で「遺伝的素因」「環境因子」「免疫異常」が関係していることが分かっています。

 

遺伝的素因とは生まれ持った体質のことで、この素因が不規則な食生活、精神的ストレス、肥満などの環境因子と相互に作用しあうことにより、免疫に異常が生じることが原因だとされています。

 

遺伝的要因に関しては、必ず遺伝するわけではありませんが、遺伝的な要素に食生活、生活スタイルなどの環境因子が加わることで発症しやすくなるという調査結果があります。

 

特に最近の研究では、乾癬とメタボリックシンドロームの関連性に注目が集まっており、高カロリー食(高脂肪、肉に偏った食事など)や欧米型の食生活が原因の一つではないかと言われています。

 

欧米では家族間の発症率が20〜40%で、日本の4〜5%と比べかなり高いことからも、欧米型の食生活が家族間の発症率と関係があるとみられています。日本においての発症率が上昇してきていることも、食生活の欧米化と何らかの因果関係があると言われ、研究が進められています。

 

 

乾癬の対策とは

 

主な対策は、外用療法(塗り薬)、内服療法(飲み薬)、光線療法(紫外線照射)の3つです。

 

「外用療法」は最も一般的に行われる治療で、尋常性乾癬の約9割は外用療法から治療をスタートします。

 

初期には即効性のあるステロイド外用薬、症状が落ち着いてきたらビタミンD3外用剤に移行するという方法が多くとられています。

 

ステロイドは効果が現れるのが早く、症状を素早く抑えてくれますが、長期間使用すると皮膚の萎縮など副作用が出ることがある一方で、ビタミンD3外用剤はステロイドに比べて効果がゆっくりと現れますが、副作用が少ないため、長期間治療が必要なこの疾患には適しています。

 

 

「内服療法」は、

皮膚の代謝を調整するビタミンA誘導体(チガソン(レチノイド))を内服する治療法です。

 

皮膚の代謝過剰が原因の一つのため、ビタミンA誘導体で代謝を調整することで症状を改善させていきます。

 

光線療法と併用させると、相乗効果が期待できます。塗り薬や光線療法だけでは効き目がなかったような重い症状にも効果的です。

 

定期的に血液検査をしながら量を調節していきます。服用中は男女とも避妊が必要です。

 

 

「光線療法」は

 

週1〜2回、専用の紫外線治療器で紫外線を照射する治療法です。

 

痛みがなく、治療時間も数分で終わることから広く用いられています。手、肘、膝などにできた乾癬に特に効果的です。

 

機器によっては限られた範囲にしか照射できないため、広範囲に照射する場合は全身に照射できる機器が備わっている病院を紹介されることもあります。

 

デメリットは色素沈着が生じやすいことと、免疫抑制剤との併用が難しいことです。

 

その他に「免疫抑制剤」の飲み薬や「生物学的製剤」の注射や点滴といった治療対策が取られることもあります。

 

いずれも効果的な反面、副作用やリスクも伴う治療法のため、定期的な検査や慎重な管理の下で行われる必要があります。日々の生活の中では、栄養バランスのよい食事や適度な運動が症状の改善に効果的です。

 

またお風呂はリラックス効果がありストレスを軽減するだけでなく、肌を清潔に保つなど様々なプラス効果があります。温まりすぎると患部がかゆくなってしまうので、ぬるめのお湯でゆっくり半身浴などをするといいですね。

 

 

乾癬の対策!売れている薬とは

 

よく用いられているのが、「エンクロン クリームEX」(資生堂)です。乾癬に特化した薬ではありませんが、ジクジクした患部にも使いやすい軟膏タイプのため、よく使われています。体内に吸収されると低活性となるステロイド剤を採用しているため、安心して使えます。無香料、無着色で刺激が少なく、殺菌効果もあります。

 

「フルコートf 軟膏」(田辺三菱製薬)は即効性があり、辛い痒みを抑えたい時などに有効です。初期症状を落ちつけるためには有効なステロイド薬ですが、症状が改善してきたら、その状態を維持する薬に切り替えるとよいでしょう。

 

「ベトネベートN軟膏」(第一三共ヘルスケア)は患部を保護する油性基材の軟膏です。ステロイド成分が皮膚の炎症によく効くため、初期の辛い症状を和らげます。外用ステロイド薬の中での強さは5段階中3番目の「強い」部類にです。このベトネベートの強さを基に、その後のステロイド外用薬の開発が進んでいったという、古くからある薬です。長期使うと皮膚の細胞増殖を抑えたり、免疫力が低下するなどの副作用が生じることがあるため、使用する期間を絞って使うことがポイントです。

 

「コラージュD入浴剤」(コラージュ)は、乾燥しがちな肌をしっとりと保つ入浴剤です。人間の皮脂に近い油性成分を使用しているため、肌に刺激が少なくやわらかな使い心地です。ぬるめのお湯でゆっくりとリラックスした後は、洗い流さずに肌に成分をなじませるようにすると効果的です。乳幼児からお年寄りまで安心して使うことができます。

 

「松やに石鹸」(グランパ社)は、全身に使える固型タイプの石鹸です。松やにには、天然の殺菌効果や頭皮の血行を整える作用があります。特有の匂いがありますが、慣れてくればさほど気になりません。ごしごしと擦らずに、泡で肌をそっと包むようにしてしばらく置いてから洗い流すと効果的です。ココナッツオイル、パームオイルなども配合されているため、使い続けることで次第に肌の調子が整ってきます。

 

 

乾癬の予防とは

 

予防は生活習慣の改善がポイントです。

 

肥満になると乾癬が悪化しやすくなるため、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、太り過ぎないように気を付けます。

 

メタボリックシンドロームの関連性も指摘されていますので、その傾向がある場合は要注意です。欧米では日本よりも発症率が高めですが、それは食生活に関係があるのではないかと言われています。

 

近年の発症率増加の背景には、日本の食生活の欧米化も関係しているのではないかと言う医師もいます。高カロリー、脂っぽいもの、アルコールなどはできるだけ控えた方がよいでしょう。

 

煙草は悪化因子ですから、できれば禁煙、どうしても無理ならせめて本数を減らすように心がけましょう。また適度に日光(紫外線)を浴びることも改善に効果があります。

 

 

乾癬と似ている病気

 

「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」は、頭、顔、脇の下など皮脂の分泌の多い部位に見られる皮膚炎で、紅斑とフケが見られる症状がよく似ています。乾癬は全身に症状が広がるのに対して、脂漏性皮膚炎は発症する部位が限られていることが見分けるポイントとなりますが、髪の生え際にだけに症状が現れたりした場合には区別が難しいことがあります。

 

「貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)」もよく似ています。痒みを伴う茶褐色の楕円形の小さな湿疹が広がる皮膚疾患ですが、じゅくじゅくと湿潤傾向にあることが異なる点です。

 

「紅皮症」は全身の皮膚の9割以上が赤くなり、皮膚がボロボロとはがれ落ちる皮膚病です。乾癬が原因の紅皮症もありますが、アトピー性皮膚炎やその他の湿疹などが原因のことも多いため、それぞれに適した治療が必要となります。

 

 

まとめ

 

乾癬は治りにくい病気ではありますが、治療の進歩により現在では症状の悪化を抑え、快適な生活が送れる状態を保つことができるようになっています。
症状をよくするには、根気強い治療と生活習慣の改善が必要です。正しい外用薬の使い方、日々の肌の手入れ、栄養バランスのよい食事、適度な運動など、様々な要因が重なり合って症状は改善されていきます。

 

医師や家族などの理解と協力のもと、焦らず根気よく治療に取り組むことが大切です。

 



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